2020
10/02
第42話:RFP後のベンダー提案プレゼンで話しているのは誰?
- RFP/RFI
- コラム
執筆者
情シスコンサルタント
田村 昇平
プレゼンでたくさん質問してみる
「追加費用はどうやれば抑えられますか?」
「後から仕様追加は相談に乗っていただけますか?」
「アジャイルで設計書は作らないんですか?」
「現場の声が強いのですがどうすればいいですか?」
「過去にこういった経験はありますか?」
等々・・・。
あるシステム再構築プロジェクトで、3社にRFPを発行し、各社にプレゼンテーションを実施していただきました。
各社とも提案書の説明は「安定」しています。
おそらく事前にリハーサルを重ねたのでしょう。プロジェクトマネージャーの説明にミスや失言はありません。そして、かなりの棒読みです(笑)。
その後、質問タイムに移り、冒頭の質問をします。
この質問に対するベンダーの反応が、実に様々でした。
ベンダーの反応の仕方で、いろいろなことが見えてきます。
プレゼンの重要な評価ポイントとは
プレゼンで最も確認しなければならないことは何でしょうか?
わざわざ対面でプレゼンをやる意味を考えてみましょう。
提案内容は、提案書を読み込めばだいたい分かります。プレゼンをすることで、値下げしてくれるわけでもありません。不明点があれば、書面で正式に回答をもらう方が確実です。
それでもなお、わざわざプレゼンをやる必要性は何でしょうか?
それは、プロジェクトマネージャーを確認したいから。
「この人ならプロジェクトを任せても大丈夫」
と安心したいからです。
提案書にプロジェクトマネージャーの経歴が書いてありますが、書面ならどうとでも脚色できます。数日しか関わっていないプロジェクトでも、全てを書き出してコメントを盛れば、それなりに見栄えがよくなります。
なので、リアルで会って、確かめたいのです。
では、プレゼンでどうやってプロジェクトマネージャーを確認すればよいのでしょうか?
話し方が上手いか、こちらの話を聞いてくれるか、質問に柔軟な回答ができるか、経歴はマッチしているか、ウチに合いそうか、好きか嫌いか(笑)、など見所はたくさんあると思います。
その見所で、実はとても簡単な方法があります。それは、質問に対して
プロジェクトマネージャーが喋るか、営業が喋るか、
です。プレゼンという社運がかかったシーンでは、ベンダーも慎重になります。
この大事な回答権をプロジェクトマネージャーに委ねられるか?
ここにベンダー社内の信頼度が現れます(バレます)。
ベンダー側が
「まだ会社として自信をもってコイツを推せない」
「下手に喋らせるとボロが出て危険」
と考えると、必ず横から営業が割って入ってきます。
プロジェクトマネージャーに質問をしているのに、違う方角から回答が来ます(苦笑)。
逆に
「コイツに任せれば大丈夫」
と信頼されていれば、プロジェクトマネージャーが堂々と回答します。隣とアイコンタクトすらとらずに、当然のように話し始めます。
つまり、誰が回答するかで、ベンダー社内の信頼関係が分かるのです。
質問が1個や2個であれば我慢できますが、10個ぐらい出せばボロが出てきます。
コツは、テクニカルな質問ではなく、決断・信念・経験・ノウハウ・自信が求められるような質問をすること。
それに対して、迷いもなくプロジェクトマネージャーが応答してくれるか、営業または上司にSOSのサインを出してしまうか、そこを見ます。
仮に営業がパーフェクトな回答をしたところで、契約後は顔を出さなくなるだけなので、意味はありません。ノイズでしかないです。
プレゼンの場で、回答すら任されない人に、プロジェクトのリーダーシップを発揮できるとは到底思えません。
正解のない質問に堂々と答えてくれることで、ユーザー側は安心してプロジェクトを任せられるのです。
そのベンダーの「エース人材」かどうかは営業が教えてくれる
冒頭のプレゼンで3社に対して、10個の同じ質問をしました。
A社は、10個ともプロジェクトマネージャーが回答しました。
B社は、7個、プロジェクトマネージャーが回答しました。
C社は、なんと10個とも営業が回答しました。
C社は、何度もプロジェクトマネージャーに向かって質問しているのに、必ず逆方向から声が聞こえてきます。
左を向いて話をして、右を向いて聞く、というエクササイズを10回繰り返しました(笑)。
C社のプロジェクトマネージャーはよほど自信がないのか、気まずそうな表情でした。営業は言いたいことが言えて満足そうです。
帰り際に営業が「どうぞよろしくお願いします」とドヤ顔で挨拶されたので、こちらも全力の愛想笑いをお返ししました(笑)。
一方のA社は、隣に役員が座っていましたが、ほとんど発言せず、プロジェクトマネージャーの回答を静かに聞いていました。
あまりにも静かだったので、あえてその役員に質問をぶつけてみたところ、勢いよく超的確な回答が返ってきて、びっくりしました。
おそらくこの役員の方は、全ての質問に素晴らしい回答をすると思います。そこをあえてプロジェクトマネージャーに全て任せている、ところに感動しました。
そして、ふと「自分はタイプ的にこのA社の役員ではなくてC社の営業なのではないか」との考えがよぎり、プレゼン中に変な汗をかきました(苦笑)。
貴社のIT部門・情報システム部門は、ベンダープレゼンでどのように質問をしていますでしょうか?
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執筆者プロフィール
情シスコンサルタント 田村 昇平
IT部門の育成・強化を専門とするコンサルタント。
ITプロジェクトの企画から導入・保守までの全工程に精通し、そのノウハウを著書「システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」(技術評論社)で公開している。
>>著書の詳細は、こちらをご覧ください。