2020
2/19
第34話:パッケージの自由度のなさは本当にデメリットなのか?
- PMO
- コラム
執筆者
情シスコンサルタント
田村 昇平
現場のストレスはピーク
「パッケージは、かゆい所に全然手が届かなくて大変です」
PMOを務める情報システム部のAさんが、ため息交じりにお話しされました。
- 今までのエクセルの方が早かった
- 今まで出していた帳票が出せない
- 今までやっていたチェックができない
- 自由にデータ修正ができなくなった
- いちいち申請承認が必要で面倒になった
今まではスクラッチ開発したシステムを使っていました。ところが今回はパッケージシステムを導入します。
システムの動きが全く異なるため、ユーザーはとにかくストレスを感じている様子。Aさんにその不満の矛先が向いているようです。
「それは良かったですね~」
田村は笑顔でお答えしました。
パッケージの最も重要なメリット
今一度、整理したいのですが、パッケージのメリットは何でしょうか?
- 低コスト
- 短納期
はい、正解です。では、デメリットは何でしょうか?
- システムの自由度/柔軟性がない
はい、ここです。短絡的に考えるとその通りですが、本当にそれはデメリットなのでしょうか?
当社では、以下のように考えています。
パッケージの本当の魅力は、自由度/柔軟性がないこと。
なぜでしょうか?
外部からの大きな制約こそ、最も効果的な「標準化」に繋がるからです。
社内だけで「標準化」を検討してみると分かります。中途半端で小手先の「標準化」しかできません。ユーザーは自分たちでリスクを負わず、安全で、実現容易な変更案しか出してきません。
業務フローで言えば、枝葉の細かい部分だけです。
ところが、パッケージは違います。
業務フローの根幹を変える制約が押し付けられ、強烈なストレスが発生します。当然、ユーザーは猛反発しますが、そこはトップダウンで押し切る必要があります。
そこで初めて、大きな「標準化」に向かうのです。
自ら血を流して、痛みを伴いながら、大きな変革へと向かわざるを得なくなります
良いパッケージには「他社のベストプラクティス」が詰まっています。その黒船で、「標準化」に向かって行くのです。
(ただし、悪いパッケージを選んでしまうと、話が違ってきます。この辺りは次回のコラムで書きます。)
裏を返せば、大幅なカスタマイズやスクラッチ開発を選択するということは、本当の意味での「標準化」を諦めること、とも言えます。
制約も使い方次第
事業戦略として、その事業は独自性が強く、競争力の源泉であれば、スクラッチ開発で作り込むべきでしょう。もっと言えば、内製化して、柔軟性とスピードを確保できる体制を構築すべきです。
一方で、属人化を解消し、業務の「標準化」を目指すのであれば、パッケージの「不自由さ」を利用すべきです。
身内だけだと大きな変革は難しいですが、外圧にさらされることで、大きな変革も可能となります。
貴社のIT部門/情報システム部門は、パッケージの「制約」をうまく活用できていますでしょうか?
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執筆者プロフィール
情シスコンサルタント 田村 昇平
IT部門の育成・強化を専門とするコンサルタント。
ITプロジェクトの企画から導入・保守までの全工程に精通し、そのノウハウを著書「システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」(技術評論社)で公開している。
>>著書の詳細は、こちらをご覧ください。