2019
6/07
第25話:情シス/IT部門のPMOはトップマネジメントを意識していますか?
- PMO
- コラム
執筆者
情シスコンサルタント
田村 昇平
現場とだけ密に連携するPMO
「業務部長には確認したんですよね?」
「え?なぜ確認しないといけないんですか!」
情シスPMOのAさんに確認すると、感情的に反論してきました。
業務改革プロジェクトで、ある業務機能を本社に集約するかどうかの議論がありました。
現場の意見は「本社に集約できない」でした。その理由を情シスAさんは、口調を強めて説明されます。
現場の意見を細かく丁寧に吸い上げている点は、素直に感心しました。
一方で、「この判断を業務部長が聞いたらどう思うか?」と考えると、激しく不安になりました。
どうやらAさんは、こう考えているようです。
- 現場と苦労して決めた内容にどうしてケチをつけるのか
- 現場の大変さを知らないだけだ
- 現場を知らない業務部長は判断できない
情シスPMOはどこまで確認をとって、進めるべきでしょうか?
トップは何を求めているのか
情シスメンバーは、現場担当者とは積極的に調整します。電話、メール、個別会議など、とても密にコミュニケーションします。
これは、どこの現場でも見られる光景です。
ところが、業務部門のトップまたは経営層とのコミュニケーションとなると、別人のように鳴りを潜めます。
通常業務であれば、立場をわきまえて、しかるべき報告ルートで報告するべきでしょう。
しかし、「全社横断プロジェクト」や「業務改革プロジェクト」においては、経営層や業務トップは何を求めているのでしょうか?
現場から上がってくる「主観的な意見」とは異なる、「客観的な意見」や「フィルターのかかっていない事実」を求めています。
その上で、より多くの情報を踏まえて、トップとして判断したいのです。
- 全社的な判断や大きな決定事項
- トップと現場でギャップが感じられる事項
- インパクトの大きい想定外の事項
多くの情シスを支援してきましたが、トップに報告しに行って、嫌がられたことはほとんどありません。むしろ忙しい中でも時間を割いて、話を聞いてもらえます。
トップに軽視されるPMOは、同じクラスの話しやすい人とだけ仕事をします。ヒリつくような場でトップへ説明することを避けるようでは、小さな事務局はできても、大きな改革をリードすることはできません。
情シス/IT部門は客観性が武器となる
冒頭の件、嫌がるAさんを説得し、業務部長に報告しに行きました。
部長は、Aさんの説明を前のめりで聞き、真剣に考えています。現場の判断に理解を示しながらも、「部長預かり」になりました。その後、別の場で議論が行われ、「本社に段階的に集約する」という異なる結論で進むことになりました。
あのまま現場だけで進めていたら、後でとても大きな問題になっていたでしょう。想像するだけでも恐ろしくなります。
トップと現場のベクトルを合わせることは非常に重要です。それは、客観的な立場の情シス/IT部門だからこそ、行いやすいのです。
報告が終わった後、業務部長に言われました。
「このメンバーで定例会をやろう」
Aさんは嬉しそうでした。
貴社の情報システム部門/IT部門は、トップレベルのマネジメントを意識していますでしょうか?
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執筆者プロフィール
情シスコンサルタント 田村 昇平
IT部門の育成・強化を専門とするコンサルタント。
ITプロジェクトの企画から導入・保守までの全工程に精通し、そのノウハウを著書「システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」(技術評論社)で公開している。
>>著書の詳細は、こちらをご覧ください。