2018
11/21
第16話:多忙なユーザーがボトルネックになったとき、情シスPMOはどうするか?
- PMO
- コラム
執筆者
情シスコンサルタント
田村 昇平
多忙なユーザーの反応はいつも同じ
「こっちは暇じゃないんですよ!」
「今月の処理を失敗したら責任とってくれるんですか?」
「私にこれ以上残業させるつもりですか?」
「考える時間も打ち合わせの時間も全くとれません!」
「そっちで勝手にやればいいじゃないですか!」
業務部門のMさんにクレームを言われたのは、2~3回ではありません。話しかけると、いつも否定的な言葉を浴びせられます。
PMOとして支援していた田村は、Mさんの顔を見ただけで胃が痛むようになりました。
Mさんは、業務部門のリーダーで、毎月「締め処理」に追われています。エクセルの集計、システムへの転記、全国の営業所からの問い合わせ対応など、毎日フル回転しています。いつも終電で、繁忙期には休日出勤も当たり前です。
そのような状況だからこそ、プロジェクトを立ち上げ、改革を進めようとするのですが、そのユーザーが「ボトルネック」となることは珍しくありません。
基幹システムの再構築では特にそうですが、このような多忙なユーザーを相手に情シスPMOはどう進めていけばよいのでしょうか?
根本的なユーザー貢献の意味
業務メンバーは、本業を抱えています。月初は「締め処理」で大忙しです。普段は温厚な人でも「話しかけるなオーラ」を全身から発しています。
しかし、PMOの立場からすると、プロジェクトを止めるわけにはいきません。そもそもスケジュールに余裕がないのに、ユーザーの不参加は遅延が大きくなるだけです。
このように定期的に「繁忙期」が訪れるユーザーに対して、どう進めていけばよいのでしょうか?
それは、「業務のピーク」と「プロジェクトのピーク」をずらすことです。
例えば、月初1~7営業日までユーザーの繁忙期とします。それをWBS上に最初に書いてしまいます。その上で、繁忙期を避けて8営業日からユーザータスクを詰め込みます。そのWBSを見せて、こう説明します。
「この予定で進めないとプロジェクトが終わりません」
大抵のユーザーは抵抗しますが、PMOも流されるわけにはいきません。ユーザーの都合だけを聞いてしまうと、プロジェクトはいつまでたっても終わらないからです。
忙しいユーザーをどう動かすか?
これはPMOにとって根幹のスキルです。あらゆる手段を講じていきます。
- ユーザーに多くのメリットを説明し、動機付けする
- ユーザーの上司に相談して、圧力をかけてもらう
- PMOとして誠意を尽くし、ユーザーの心に訴える
- ユーザーに丸投げせず、回答のおぜん立てをする
- クレームにめげずに、何度もアプローチする
PMOは、ユーザーの「現在」に配慮はしますが、ユーザーの「未来」に責任があります。短期的にはユーザー負担でも、長期的にはユーザーのためになるなら、信念を持ってプロジェクトを進めるべきです。
「今は恨まれても、後で感謝されればいい」と開き直ることも必要です。
このようにPMOは「メンタルを鍛えるチャンス」を多く得られます。このチャンスをものにしたメンバーが増えると、情シスは強くなっていきます。
終わり良ければすべて良し
冒頭のプロジェクトは完了し、Mさんに挨拶したときのことです。
Mさんは「本当にありがとうございました。おかげさまで・・・」と10秒間沈黙があった後、メガネを外して泣き出しました。それを見た田村も泣いてしまいました。
PMOは、板挟みになりやすいポジションです。時には現場に恨まれることもあるでしょう。でも「終わり良ければすべて良し」です。
PMOは最後に「感謝」という最大の報酬を受け取ります。それが全てです。苦しんだ分、達成感も大きく、自身の成長も実感できます。
この「感謝」が次のプロジェクトのエネルギーとなります。情シスの立場も向上し、全社的な好循環に入っていきます。
貴社の情シスPMOは、忙しいユーザーとどのように接していますでしょうか?
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執筆者プロフィール
情シスコンサルタント 田村 昇平
IT部門の育成・強化を専門とするコンサルタント。
ITプロジェクトの企画から導入・保守までの全工程に精通し、そのノウハウを著書「システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」(技術評論社)で公開している。
>>著書の詳細は、こちらをご覧ください。