2018
11/06
第15話:情シス/IT部門のPMOが業務部門のPMに嫌われている場合にどうするか?
- PMO
- コラム
執筆者
情シスコンサルタント
田村 昇平
PMから信頼されないPMO
「PMのAさんに嫌われているんです」
情シスPMOのSさんから相談を受けました。
Sさんが定例会でファシリテーションすると、業務部門のPMであるAさんは議論に参加しなくなるそうです。
対立したり、ダメ出ししたりすることはないものの、外の景色を見たり、ノートPCで内職したり、あからさまに存在感を消します。
担当者クラスであれば、そこまで気にしなくてもいいのかもしれません。しかし、PM(プロジェクトマネージャー)となると、そうはいきません。
PMとPMOが内部分裂して、プロジェクトがうまくいくはずがありません。
実はこのような状況、業務部門と情シスの共同プロジェクトでは起こりがちです。情シスPMOは、業務部門のPMとどう距離を近づけていけばよいのでしょうか?
PMに正面から向き合う
PMOとPMの関係性を改善するには、まず「PMの人物タイプ」や「プロジェクト状況」から何が最善かを考えていきます。100プロジェクトがあったら、100通りあるといっても過言ではありません。
絶対的な方法はありませんが、効果がありそうなアプローチを「改善されるまで」やり続けるのが唯一の方法といえます。
<アプローチ選択肢>
- PMとサシ(1対1)で話す
- PMとの接点を増やす(メール、打ち合わせ等)
- PMとPMOによる「PMO内部定例会」を設ける
- PM以外の信頼を得て、外堀を固める
- プロジェクトオーナーに相談する
- 業務を勉強し、業務もわかることをアピールする
- プロジェクト体制変更を進言する
この中で優先的に行いたいのは「PMとサシで話す」です。そもそも、PMとPMOは密に連携をとる必要があります。関係性に問題がある場合、大抵はこの部分が抜け落ちています。大勢の参加者がいる会議でしか対面していない、個別で話したことがない、等です。
この「PMとサシで話す」場合、何を心掛ければよいのでしょうか?
ここでやってはいけないのは、不安や怖さから、PMO側が一方的に話してしまうこと。そうではなく、相手のPMにいかに多くしゃべってもらうか、感情を吐き出してもらうか、を重視します。
おそらく、不満や文句を言われるでしょう。普通に聞いてしまうと、腹が立ってしまいます。しかし、関係性を改善するための「チャンス」と捉えると、それらは貴重な情報になるはずです。
PMの不満は、おおよそ以下のようなものです。
- PMOが役に立つとは思えない
- 自分たちだけでやれるから情シスは必要ない
- そもそも情シスが体制に加わると聞いていなかった
- PMOは業務を知らないから戦力にならない
- PMOが何をやってもいいけど、足を引っ張らないでほしい
- すぐ上にチクるから腹を割って話せない
- 簡単に標準化というけど、今までの経緯を知らないでしょ
・・等々。
これら不満パターンをあらかじめ予想しておくことで、実際に不満を浴びても感情的にならなくなります。「これは思った通り」「これは予想外のパターンだ」と冷静に聞くことができます。
相手の不満に正面から向き合い、解決していきたいという姿勢は、相手に刺さります。相手も不満を吐き出した時点で、感情的な壁は無くなっています。
そこからは前向きに交渉していくだけです。
PMOとしてできることを伝えて、PM補佐としての役割を合意していきます。
PMとPMOの関係性はプロジェクトの雰囲気を変える
冒頭の情シスSさんも、PMとサシで話をしました。
(田村も同行しましょうか?と聞くと、断られました(笑))
Sさんは、PMの不満をすべて聞き出しました。いくつかは感情的になりそうでしたが、心の準備があったため、踏みとどまったそうです。その上で、課題に1つ1つ向き合い、今の情シスにできることを伝えました。最後は、良い雰囲気で終わったそうです。
その日を境に、Sさんのファシリテーションは劇的に変わりました。議論にPMが参加するかどうかで、これほど雰囲気が変わるものかと驚いてしまいました。
御社の情シスPMOは、腹を割ってPMとの信頼関係を築けていますでしょうか?
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執筆者プロフィール
情シスコンサルタント 田村 昇平
IT部門の育成・強化を専門とするコンサルタント。
ITプロジェクトの企画から導入・保守までの全工程に精通し、そのノウハウを著書「システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」(技術評論社)で公開している。
>>著書の詳細は、こちらをご覧ください。