あるIT部門の大きな決断

「IT部門の社員はPMに専念する」(※PM:プロジェクトマネージャー)

以前、ご支援した企業のIT担当役員が発信したメッセージです。

それまでIT部門は、膨大な数のITプロジェクトを担当していました。システム調査、ベンダー調整、社内調整、会議推進・出席、各種資料作成など、やることはキリがありません。

1つのプロジェクトでも大変なのに、それをどの社員も2~3つ掛け持ちしていて、まさしく忙殺されていました。社員はいつも終電で帰り、休日出勤も当たり前でした。

トラブルも多く発生しており、忙しいわりにIT部門の評判は良くありません。周囲から感謝されることも少なく、疲弊した社員は次々と辞めていきます。新しい人が来ても、3年以内にいなくなります。

この問題を解決するため、トップが冒頭の宣言をしました。

社員はプロジェクトの「PM」のみを担当し、それを補佐する「PMO」は全て「外部コンサルタント」という編成になりました。

外部コンサルタントという選択肢を考える

IT部門にとって、外部コンサルタントを使うメリットは何でしょうか?

以下にメリットを挙げてみます。

<IT部門のメリット>
① ITプロジェクトの専門家、即戦力を採用できる
② IT部門の人手不足をすぐに解消できる
③ 不要になれば解約し、恒久的に人件費を払わなくて済む
④ 社員は最低限の人数で効率的に回せる
⑤ 雑務を外に出し、社員はコア業務に注力できる
⑥ 外部人材は、社内政治や保身に関係なく、客観的に行動できる
⑦ コンサルの存在が、ITベンダーへの牽制になる
⑧ プロジェクト経験が豊富で、安定して推進できる
⑨ 外部コンサルが残した資料がノウハウになる
⑩ IT部門全体がレベルアップする

このように、外部コンサルは、使い方次第ではとても効果的です。とりわけ、「PMO」はどのプロジェクトでも同じ役割が求められるため、外部に任せやすいといえます。

  • プロジェクト管理(進捗、課題、リスク、費用)
  • ベンダー調整
  • 会議推進、ファシリテーション
  • 資料作成/li>

では、社員は何をすればいいのでしょうか?

今までは忙しくて手が回らなかった、より重要で本質的な役割を担うのです。「PM」の本来の業務とも言えます。

  • 経営層との経営戦略・方針とのすり合わせ
  • 業務トップとの重要項目の調整
  • プロジェクト全体の管理、方針の提示
  • 重要局面での判断、行動

社員は、雑務から解放され「付加価値の高い業務」に専念できるようになります。多くのプロジェクトを無理なく掛け持ちでき、全社的に影響力を行使できるようになります。

忙しくなった時は、社員に踏ん張ってもらう。基本的には、それで正しいと思います。ただ、あまりにもやることが多すぎると、社員は「付加価値の低い雑務」に追われてしまいます。特にプロジェクトを多く掛け持ちすると、「雑務」だらけになります。

もし、社員に付加価値の高い仕事のみを求めるならば、そうでない仕事を積極的に外部に任せる。それがトップの行うべき判断となります。

外部リソースは、必要なときに必要な分だけ活用する。それが、最も合理的で賢い使い方ではないでしょうか。

外部コンサルは手段であって目的ではない

冒頭の企業は、全てのプロジェクトでPMOを外部コンサルで調達し、社員はPMだけを担当します。その結果、数年後には次のようになりました。

  • 残業が大幅に減った
  • 離職率が大幅に低下した
  • 業務部門との関係性が良くなった
  • プロジェクトの品質が大幅に上がった
  • IT部門の社内での影響力が大きくなった

近年は、どの企業もIT部門の見直しを迫られています。

企業によってアウトソーシングする領域は様々ですが、IT部門の方針が如実に表れる部分でもあります。

貴社のIT部門/情報システム部門は、外部リソースを戦略的に活用していますでしょうか?