2018
8/06
第8話:情シス/IT部門が存在感を高めていく方法とは?
- コラム
- 情シス論
執筆者
情シスコンサルタント
田村 昇平
業務部門からのヘルプ要請の共通点
「プロジェクトがうまく行っていないので手伝ってほしい」
ある「業務部門」の部長から相談を受けました。お話を要約すると、以下のような状況でした。
- 基幹システムの再構築プロジェクトで要件定義中
- 要件が広がり過ぎて収集つかない
- ベンダー見積もりが予算の3倍超で開発に入れない。
プロジェクト体制に情報システム部門(以下、情シスと略す)が入っていなかったことを問うと、以下の回答がありました。
「ウチの情シスは、プロジェクトを手伝う役割はないんです」
弊社では、主に情シスをお手伝いしていますが、時折、業務部門からの依頼も受けることがあります。その業務部門からの依頼に共通していることは、
「情シスの関与が薄い」
ということです。
情シスとプロジェクトの関係性
情シスのITプロジェクトにおける「役割」は、どのように考えていけばよいのでしょうか?
1つの役割としては、「業務横断プロジェクト」や「全社的なプロジェクト」を情シスが仕切って進める、ということです。
例えば、複数の部門が関わるプロジェクトで、どこかの業務部門が仕切ることを想像してみてください。その業務部門は、機能の優先順位付けや予算配分などで、自部門の利益を中心に考えてしまいがちです。仮にそうでないとしても、周囲からは誤解を招いてしまいます。
情シスであれば、直接の当事者(エンドユーザー)ではないため、自然と客観的かつ全社的な立ち位置で動くことになります。このようなプロジェクトは、情シスは「何が何でも」中心的な役割を担っていくべきでしょう。
一方で、1つの業務部門に閉じたシステム導入はどうでしょうか?
このケースでは、業務部門が主導で行うケースが一般的になってきています。その業務の当事者として、要件を整理し、ベンダーと調整できます。スピードを求められる近年では、その方が都合のよいといえるでしょう。
しかし、「情シスが頼られない」のは別の話です。
業務部門に全て任せてしまうと、セキュリティが疎かになったり、同様のシステムが既にあるのに、競合システムを調達してしまったりすることもあります。ベンダーの言い値で発注し、ボッタクリにあうこともあるでしょう。
何より致命的なのは、「品質・リスク・コスト」などのマネジメントに不慣れなため、プロジェクトが失敗してしまうことです。特にプロジェクトの規模が大きくなればなるほど、マネジメント不足は致命的であり、失敗してしまう確率が高くなります。
全社的にプロジェクトを安定して進めたいなら、マネジメントの専門家を常にアサインしておく必要があります。全社ルールとして、一定規模以上は、マネジメントを支援するPMO(Project Management Office)の設置を義務付けます。
そのPMOに、必ず「情シス」が入るべきです。
もし、そのような文化がない企業であれば、最初は業務部門から抵抗されるかもしれません。でも、抵抗は周りが慣れるまでの一時的なものです。
最初は議事録や雑用係から入って、徐々に影響範囲を広げていき、最後は信頼される存在になればいいのです。
実際に弊社が支援する場合も、情シスが「下請け」の立場から入るケースや、「何もしなくていいから邪魔だけはしないで」と冷遇されるケースがほとんどです。しかし、その後信頼を積み上げ、替えのきかない存在になることは、簡単ではありませんが、多くの現場で達成できていることです。
そこで情シスの拠り所となるスキルは「ファシリテーション」と「プロジェクトマネジメント」となります。このスキルさえあれば、どのようなプロジェクトにおいても、重宝されます。あとは、業務を覚えて馴染ませればよいだけです。
田村は「失うものは何もないので、これからどんどん上がっていきましょう。そのプロセスを味わってください」と伝えています。
この言葉に笑顔で反応する情シスは、かなり早い段階で評価を覆していきます。
下請けからパートナーへ
ITプロジェクトには、必ず「IT」や「システム」の要素が含まれるため、情シスが入る口実はいくらでもあります。PMOとして、どのプロジェクトにも入り込めるということです。
情シスが「下請け」から「パートナー」になる。
次々とプロジェクトを担当することで、「ファシリテーション」と「プロジェクトマネジメント」のノウハウが溜まり、スキルが磨かれていきます。そのスキルが感謝され、次のプロジェクトを呼び込みます。まさに情シスにとっての「好スパイラル」が生まれます。
情シスの稼働の多くを占める、システムの「運用・保守」は、企業にとって重要な位置づけで無くすことはできません。そこを情シスが担うのも自然の流れでしょう。
一方で、情シスがより経営に貢献するなら、「プロジェクト型」の方にシフトすることも有力な選択肢となります。
御社の情シス/IT部門のリソースは、どこを重点的に投入していく計画でしょうか?
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執筆者プロフィール
情シスコンサルタント 田村 昇平
IT部門の育成・強化を専門とするコンサルタント。
ITプロジェクトの企画から導入・保守までの全工程に精通し、そのノウハウを著書「システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」(技術評論社)で公開している。
>>著書の詳細は、こちらをご覧ください。