2018
7/27
第7話:プロジェクトマネージャーを社内で育成する方法とは?
- コラム
- 情シス論
執筆者
情シスコンサルタント
田村 昇平
プロジェクトマネジャーは人材不足
「ウチの若手をプロジェクトマネージャーに育ててほしい」
最近、増えてきた当社への依頼です。
どの現場にいても、プロジェクトマネージャー人材は不足していると感じます。どこの部長からも、びっくりするほど同じことを言われます。
企業において、業務改革を行うための「プロジェクト」は必要不可欠です。改革を行う上で必要な関係者を社内横断で集め、目的に向かって進んでいきます。そのプロジェクトの体制で最も重要なポジションが「プロジェクトマネージャー」です。
作業者や技術者は外部から調達可能ですが、プロジェクトマネージャーだけは外部から調達できません。経営層、関係部署、ユーザー、取引先、ベンダーなどとの調整を当事者として行えるのは、「社員」だけだからです。
プロジェクトマネージャーのコアスキル
このプロジェクトマネージャーの育成はどの企業でも重要なテーマですが、どのスキルを重視し、どのように育てていくのがよいのでしょうか?
プロジェクトマネージャーに求められるスキルは多岐にわたりますが、当社では「ファシリテーション」と「プロジェクト管理」の2つを、コアスキルとしてお伝えしています。
<ファシリテーションの主な内容>
- 会議(特にプロジェクト定例会)のコントロール
- 社内調整、部門間調整、グループ会社内調整
- 経営層への説明、調整
- 取引先調整、ベンダー調整
<プロジェクト管理の主な内容>
- 課題/リスク管理
- 進捗管理
- コスト管理
- 要員管理
- 要件/仕様管理
- 品質管理
「ファシリテーション」は会議進行のイメージが強いですが、会議を適切に進行させるためには、事前の準備や根回しが不可欠です。ここでは、会議に限定せず、プロジェクト全体を誘導し、関係者を動かす諸活動を指します。
ファシリテーションを鍛える場合、まずは会議のアジェンダ作成から行います。「会議成功の9割は事前準備」と言われますが、その準備の象徴がアジェンダだからです。会議の目的を設定し、その流れを「設計」していきます。
例えば、課題がたくさん残っている場合は、課題の解決が目的となります。それぞれの課題を把握した上で、担当者にどのように問いかけ、どのようにNextActionを設定するかを、課題ごとに事前準備しておきます。
ステアリングコミッティでは、経営層への説明目的、承認依頼事項、リスクなど報告内容を設定します。その上で、何度もリハーサルを行ったり、突っ込まれそうなポイントは事前にAppendixを作成したり、短時間で経営層と効果的なコミュニケーションがとれるよう準備しておきます。
「プロジェクト管理」を鍛える場合、まずはWBS(進捗管理表)の作成から行います。プロジェクトの今後のやるべきことが全て表現されるWBSは、プロジェクトを把握する上では最も効果的だからです。
WBSは、自ら手を動かすことで細部まで実行イメージが湧いてきます。今まで気づかなかったタスクや課題も見えてきます。何より、プロジェクトのことを誰よりも考えることになるため、「当事者意識」が非常に強くなります。
WBSを掌握することで、対外的な交渉やチーム内部のフォローで「先手」を打つことができます。そのリーダーシップが、プロジェクト内に好循環を呼び込んでいきます。
全ての手順は書ききれませんが、プロジェクトマネージャーとしての「ファシリテーション」と「プロジェクト管理」のポイントを押さえ、徐々に深化させていくことで、ノウハウが身についていきます。
成功体験を積み上げる
「今ならどんなプロジェクトでも回せる気がします!」
あるプロジェクト終了の打ち上げで、プロジェクトマネージャーとして大きく成長された方に笑顔で言われました。
いろいろなプロジェクトマネージャーが育っていく過程を見てきましたが、重要なのは、実際のプロジェクトを通じての「成功体験」と、そこから得られる「自信」だと考えます。これらは、座学では得られないものです。
辛いプロジェクトを乗り切った方々は、みなさん別人のように顔つきが変わります。頼もしく、雰囲気も明るく、落ち着きもあり、いろいろなプロジェクトを任せたくなります(その後、たくさん掛け持ちされて、嬉しい悲鳴?をあげています)。
御社では、プロジェクトマネージャーが不足していないでしょうか?
その場合、育成環境はしっかりと整えていますでしょうか?
コラム更新情報をメールでお知らせします。
執筆者プロフィール
情シスコンサルタント 田村 昇平
IT部門の育成・強化を専門とするコンサルタント。
ITプロジェクトの企画から導入・保守までの全工程に精通し、そのノウハウを著書「システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」(技術評論社)で公開している。
>>著書の詳細は、こちらをご覧ください。