プロジェクトマネジャーは人材不足

「ウチの若手をプロジェクトマネージャーに育ててほしい」

最近、増えてきた当社への依頼です。

どの現場にいても、プロジェクトマネージャー人材は不足していると感じます。どこの部長からも、びっくりするほど同じことを言われます。

企業において、業務改革を行うための「プロジェクト」は必要不可欠です。改革を行う上で必要な関係者を社内横断で集め、目的に向かって進んでいきます。そのプロジェクトの体制で最も重要なポジションが「プロジェクトマネージャー」です。

作業者や技術者は外部から調達可能ですが、プロジェクトマネージャーだけは外部から調達できません。経営層、関係部署、ユーザー、取引先、ベンダーなどとの調整を当事者として行えるのは、「社員」だけだからです。

プロジェクトマネージャーのコアスキル

このプロジェクトマネージャーの育成はどの企業でも重要なテーマですが、どのスキルを重視し、どのように育てていくのがよいのでしょうか?

プロジェクトマネージャーに求められるスキルは多岐にわたりますが、当社では「ファシリテーション」と「プロジェクト管理」の2つを、コアスキルとしてお伝えしています。

<ファシリテーションの主な内容>

  • 会議(特にプロジェクト定例会)のコントロール
  • 社内調整、部門間調整、グループ会社内調整
  • 経営層への説明、調整
  • 取引先調整、ベンダー調整

<プロジェクト管理の主な内容>

  • 課題/リスク管理
  • 進捗管理
  • コスト管理
  • 要員管理
  • 要件/仕様管理
  • 品質管理

「ファシリテーション」は会議進行のイメージが強いですが、会議を適切に進行させるためには、事前の準備や根回しが不可欠です。ここでは、会議に限定せず、プロジェクト全体を誘導し、関係者を動かす諸活動を指します。

ファシリテーションを鍛える場合、まずは会議のアジェンダ作成から行います。「会議成功の9割は事前準備」と言われますが、その準備の象徴がアジェンダだからです。会議の目的を設定し、その流れを「設計」していきます。

例えば、課題がたくさん残っている場合は、課題の解決が目的となります。それぞれの課題を把握した上で、担当者にどのように問いかけ、どのようにNextActionを設定するかを、課題ごとに事前準備しておきます。

ステアリングコミッティでは、経営層への説明目的、承認依頼事項、リスクなど報告内容を設定します。その上で、何度もリハーサルを行ったり、突っ込まれそうなポイントは事前にAppendixを作成したり、短時間で経営層と効果的なコミュニケーションがとれるよう準備しておきます。

「プロジェクト管理」を鍛える場合、まずはWBS(進捗管理表)の作成から行います。プロジェクトの今後のやるべきことが全て表現されるWBSは、プロジェクトを把握する上では最も効果的だからです。

WBSは、自ら手を動かすことで細部まで実行イメージが湧いてきます。今まで気づかなかったタスクや課題も見えてきます。何より、プロジェクトのことを誰よりも考えることになるため、「当事者意識」が非常に強くなります。

WBSを掌握することで、対外的な交渉やチーム内部のフォローで「先手」を打つことができます。そのリーダーシップが、プロジェクト内に好循環を呼び込んでいきます。

全ての手順は書ききれませんが、プロジェクトマネージャーとしての「ファシリテーション」と「プロジェクト管理」のポイントを押さえ、徐々に深化させていくことで、ノウハウが身についていきます。

成功体験を積み上げる

「今ならどんなプロジェクトでも回せる気がします!」

あるプロジェクト終了の打ち上げで、プロジェクトマネージャーとして大きく成長された方に笑顔で言われました。

いろいろなプロジェクトマネージャーが育っていく過程を見てきましたが、重要なのは、実際のプロジェクトを通じての「成功体験」と、そこから得られる「自信」だと考えます。これらは、座学では得られないものです。

辛いプロジェクトを乗り切った方々は、みなさん別人のように顔つきが変わります。頼もしく、雰囲気も明るく、落ち着きもあり、いろいろなプロジェクトを任せたくなります(その後、たくさん掛け持ちされて、嬉しい悲鳴?をあげています)。

御社では、プロジェクトマネージャーが不足していないでしょうか?
その場合、育成環境はしっかりと整えていますでしょうか?