RPAコンサルの自信満々の提案

「RPAを導入することで、毎月XX人月を削減でき、年間XXX万円のコストを削減できます!」

とある情シス部長の依頼で、RPAベンダーの提案に同席させていただきました。

RPAコンサルは、綺麗な数字とグラフで自信満々に説明されています。

このベンダーを連れてきた情シスメンバーも、この場で承認を取りたい様子。疑いようのない効果に、もう部長から「OK」をもらうだけ…の雰囲気でした。

田村はたまらず「一度持ち帰って検討しましょう」

とその場を強制終了しました。

手に持っているものがハンマーなら全て釘に見える

RPAは流行っています。どこの現場に行っても、RPAの導入検討が行われています。

RPAはとても優れた商品です。かゆい所に手が届きます。田村も昔、マクロを大量に作っていたので、自動化ツールの恩恵は十分に理解しているつもりです。

ただ、強烈な副作用があります。何でしょうか?

「臭いものに蓋をする」です。

例えば、RPAの得意技の1つに「転記」があります。

エクセルからシステムへの転記、システムからシステムへの転記、これらはRPAで自動化することができます。これにより、人間がやるよりも「早く、正確に、大量に」処理してくれます。

しかし、RPAの前提でいくと、「転記」そのものをなくす発想に繋がりません。

元凶のエクセルをなくす、転記自体をなくす、中間処理をなくす、マスターで一元管理する、イレギュラーを根絶する、など根本的・合理的な見直しをする機会が奪われます。

RPAのベンダーにとってみれば、転記などの中間処理は格好の獲物であり、残しておきたいのです。現場の非効率な作業を「現場の苦労を分かった風」に肯定し、誘導してきます。全体最適化され、業務フローがシンプルになると、仕事がなくなるからです。

情シスも「RPA導入ありき」で考えると危険です。

手に持っているものが「ハンマー」なら、飛び出ている物は全て「釘」に見えます。同様に、手に持っているものが「RPA」なら、現場の煩雑な作業は全て「適用対象」に見えてしまいます。

全体最適化をせずにRPAを入れると、複雑化した現場業務をそのままRPAで「固定化」してしまうということです。そこら中に「ブラックボックス」が公認された形で増殖されていきます。

RPAは部分最適化の道具であり、全体最適化の道具ではありません。RPAを検討するタイミングは、全体最適化が終わった後の「補助ツール」として検討するべきです。

情シスだからこそのRPAの扱い方

冒頭の現場は、あらためて業務プロセスを見直した結果、RPAは見送りとなりました。

<見直し結果>

  • エクセル台帳を廃止し、システムのマスターで一元管理
  • システム間の転記入力をやめて、システム連携で自動化
  • 過剰サービスをやめて、顧客に自社フォーマットへの入力をルール化

ベンダーを連れてきた情シスメンバーも最初は落ち込んでいましたが、すぐに切り替わりました。

業務改革の面白さに触れて、業務部門からの感謝が増えたからです。

「情シスでこれをやりたかったんです」と嬉しそうにお話しされていました。

情シスは、IT導入が役割なので、RPAを否定されると自身の存在を否定されたと感じるかもしれません。

でも違います。

情シスだからこそ、他の選択肢を幅広く提供できるのです。

小手先の「改善」よりも根本的な「改革」の方が、業務部門にも経営層にも喜ばれます。

改善はベンダーにもできますが、改革は情シスにしかできません。

貴社の情シスは、RPAをハンマーのように握ってはいないでしょうか?