2018
9/26
第12話:情シス/IT部門が会議を仕切る(ファシリテーション)方法とは?
- コラム
- 情シス論
執筆者
情シスコンサルタント
田村 昇平
お飾りな情シス/IT部門の進行役
「ウチのメンバーはうまく会議を仕切れないんですよ…」
ある情シス部長から相談を受けました。
そこで田村は、そのプロジェクトの定例会に参加させていただきました。
情シスのAさんが進行役ですが、冒頭でユーザー部門に話を振った後は、ユーザー側だけで議論が盛り上がります。Aさんが作ったアジェンダは存在しましたが、「日時・場所・出席者」が書かれているだけで、中身はほぼ空白でした。
気付けば予定を1時間もオーバーし、終了します。
結局、Aさんが発言したのは、最初と最後の「形式的な挨拶」だけでした。
ユーザーから信頼される進行役となるために
会議をうまく仕切る人とは、どんな人でしょうか?
テレビの司会者やMCのイメージで考えてみます。
- うまく話しをまとめる(オチをつける)
- テンポよく参加者に話を振る
- 適度に話に介入する
どれも望ましいスキルですが、プロジェクトシーンで最も求められるスキルは少し異なります。
「会議をゴールに導く人」です。
極論すると、目立たなくてもOKです。その人が進行することで、会議が終わったあとに「課題が解決した」「やるべきことが決まった」など、会議の目的が達成された『状態』になっていることです。
そのためには、「アジェンダ」(会議進行表)が重要となってきます。
アジェンダの質によって、会議の質が大きく変わるからです。
<アジェンダ作成手順>
① 会議のゴール設定
② 会議の準備
③ ストーリーの設定
①の「ゴール設定」が重要なのは言うまでもないですが、情シスにとって最も難しいのは②の「準備」です。ここにどれだけ注力できるかで、③の「ストーリー」の実行力が決まります。
この準備とは、「議論する領域の理解」「関係者の根回し」「資料作成(資料作成依頼)」などです。
準備をするにあたり、「議論する領域の理解」が避けて通れません。ユーザーと同じレベルまでは必要ありませんが、論点の把握は必要です。
なぜなら、呼び水となる質問を投げたり、各自の発言を整理したり、分かりやすい言葉に置き換えてみたり、適切なタイミングで介入できなくなるからです。
また、理解が不足していると、関係者との根回しもできません。事前に根回ししておかないと、会議で「一発決定」は厳しくなってしまいます。
そして、会議をイメージ通りに進行させるためには「適切な資料」が不可欠です。空中戦を防ぎ、効率的に共通イメージを持たせ、論点に集中させることができます。
そのためには、事前の準備に多くの時間を費やすことになります。資料を読み込み、論点を整理し、具体的な進行イメージを作っておきます。
会議の仕切り、いわゆる「ファシリテーション」を苦手としている方は、「どううまく切り返すか」という会議場面での「反射神経」スキルに意識が向いてしまいます。そういう人に限って、その前の「準備」が抜け落ちていることに気が付いていないのです。
準備をせずにファシリテーションを行うことは無謀です。ユーザーと対峙する情シスが準備を怠り、業務も分からず、論点も把握せずに、どうやってその会議を仕切ればよいのでしょうか。
逆に準備をしっかり行っておくと、自然とユーザー側から進行を委ねられます。
「Aさん、この件はいったん保留にしませんか?」
「Aさん、この宿題は私がいったん引き受けます」
「Aさん、後で相談させてください」
つまり本当の進行役とは、上から押し付けられた役割ではなく、ユーザーの信頼を得た人が自然とその座に納まる、ということです。
情シス/IT部門の存在価値を高める
情シスが会議をうまく仕切ることができるようになると、存在価値は一気に高まります。
なぜなら、プロジェクトとは「会議だらけ」だからです。
そのプロジェクトにしっかりと軸を通す存在であり、関係部署には頼もしい限りです。
そのため、情シスがPMOを名乗るなら、何が何でも進行役は担うべきです。ここで楽をして、ユーザーに任せてはいけません。ユーザーに仕切られると、情シスは武器を持たずに戦場にいるようなものです。
そして、情シスが進行役を担ったら、アジェンダをきちんと設計するべきです。
貴社の情シスは、会議をうまく仕切っていますでしょうか?
そのアジェンダは、具体的な進行イメージがありますでしょうか?
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執筆者プロフィール
情シスコンサルタント 田村 昇平
IT部門の育成・強化を専門とするコンサルタント。
ITプロジェクトの企画から導入・保守までの全工程に精通し、そのノウハウを著書「システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」(技術評論社)で公開している。
>>著書の詳細は、こちらをご覧ください。