2018
9/04
第10話:情シス/IT部門が真に信頼されるために乗り越える一線とは?
- コラム
- 情シス論
執筆者
情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス最大の試練
「どうせウチの業務は分からないですよね?」
たまに業務部門から言われる言葉です。この言葉は、情シスにとっては、ひどくショッキングな言葉です。情シスが気づかれないように隠していた部分に、グサっと刺さります。
情シスの方なら分かると思いますが、「業務」は非常に難しい。業務の全てを覚えることは不可能といえます。
業務メンバーの会話を聞いても、何を言っているのか、理解不能です。知らない単語だらけで、その単語が一般的な用語なのか、自社のローカル用語なのか、さっぱり分かりません。
あまりにも分からなさすぎて、笑いが出てきます(田村経験談)。
その後、一気に不安に襲われ、たじろいでしまいます。「この業務は自分には一生理解できない」と線引きしてしまうのです。
これが、業務部門と情シスの距離が離れてしまう原因です。
業務の一線を乗り越える覚悟
業務についていけない情シスには、決まり文句があります。
「ウチは業務内容は分からないので、きちんとシステム要求に落とし込んで説明してください」
情シスがこのように切り返したら、どうなるでしょうか?
- 業務要求をシステム要求に変換する
- 業務部門とITベンダーの橋渡しをする
これら情シスが本来求められている役割を、自ら放棄することになります。業務部門も「これならベンダーに直接話した方が早い」となります。
情シスが本当に業務部門から信頼を得るためには、「業務知識の習得」が避けて通れません。せっかくの「IT」や「システム」の知識も、「業務」と繋げられることができなければ、意味がありません。
誤解のないように補足すると、業務部門と「同等」の業務知識を身に着ける必要はありません。理想かもしれませんが、それは不可能です。業務チームと同等の年月をかけて実務を担当しないと、見に着くわけがありません。
しかし、そこで「線引き」をしないことです。
重要なのは、きちんと業務チームの相談を受け止め、傾聴し、一緒に解決していくという姿勢を打ち出すことです。
そして、業務チームの話の「要点」を理解するために、業務を勉強することです。業務チームの話を100%理解する必要はありませんが、システム要求に落とし込むためには、最低限の理解が必要となります。
今更言うまでもありませんが、情シスも忙しいし、暇ではありません。
しかし、忙しい中で、どれだけ業務を覚えることに時間を割けるか。他にやらないといけないタスクよりも優先順位を上げられるか。多くを犠牲にしてでも、業務に踏み込めるか。
その「覚悟」を乗り越えた情シスだけが、真の信頼を勝ち取ることができます。
決して、表面的なテクニックで、楽に得られることはありません。
「あれ?よく知ってるね!」という業務部門には嬉しい驚きと、泥臭く真剣に業務と向き合う姿勢が、業務部門の心を動かすのです。
攻めの情シスの条件
田村も、様々な業界を情シスの立場でお手伝いしてきました。銀行、保険、不動産、医療、介護、流通…、そのたびに業務知識の「大きな壁」が立ちはだかりました。
業務部門から受領した「業務フロー」や「業務マニュアル」などの資料を、穴があくまで何度も読み返し、頭に叩き込みました。その業界自体が初めてであれば、専門書5~10冊を買って、読み込みました。
でも、その先に素晴らしい展開が待っていることを知っているからこそ、乗り越えられてきました。
情シスが「IT」と「業務」の両方を押さえたら、鬼に金棒です。業務部門から信頼されるに決まっています。その積み重ねが、情シスの存在感を高め、会社を引っ張っていく存在になっていきます。
御社の情シスは、業務の一線を越えられていますか?
それとも、自ら線引きして「受け身の情シス」になっていないでしょうか?
コラム更新情報をメールでお知らせします。
執筆者プロフィール
情シスコンサルタント 田村 昇平
IT部門の育成・強化を専門とするコンサルタント。
ITプロジェクトの企画から導入・保守までの全工程に精通し、そのノウハウを著書「システム発注から導入までを成功させる90の鉄則」(技術評論社)で公開している。
>>著書の詳細は、こちらをご覧ください。