業務部門が抱えるIT部門への不満

「IT部門をプロジェクトに呼んでくれないんです」

ある一部上場企業のIT部門長が、ため息とともにお話しされました。

最近、業務部門が主管のプロジェクトが多く立ち上がっており、そのプロジェクト体制図にIT部門が組み込まれないそうです。業務部門とITベンダーだけで最後まで完結させ、出来上がったシステムをIT部門に引き継いでいるとのこと。

そこで田村は、業務部門の関係者に聞きにいきました。すると、IT部門への不満が出るわ出るわ…。要約すると以下のようです。

・運用と保守しかやっていなのに忙しいと断られる
・業務は分からないと線引きされる
・ベンダーとの調整も業務部門がやった方が早い
・IT部門と一緒にやるメリットがわからない

この現場に限らず、上場企業などしっかりしたIT部門を持っている組織ほど、この傾向が強いと感じます。システム導入が一通り完了し、保守がメインになってくると、IT部門が文字通り「保守的」になっていきます。保守だけで手一杯で、他の取り組みや依頼に対して消極的になっていきます。

IT部門/情シスに求められる2つのスキル

ITの活用力が業績を左右する時代です。この時代にIT部門が求められるスキルは何でしょうか?

それは、「プロジェクトマネージメント」と「業務改革」のスキルです。

「プロジェクトマネージメント」とは、プロジェクトの目的を達成するためのあらゆる活動を指します。具体的には、進捗管理、課題・リスク管理、品質管理、コスト管理、ベンダー管理、プロジェクト計画策定、WBS作成、会議運営、部門間調整、ファシリテーション・・・など多岐にわたります。

これらを身に付けるのは大変そうに聞こえるかもしれませんが、IT部門が最も身に付けやすいポジションにいます。なぜなら、プロジェクトには必ずITが絡むからです。積極的に関係していくことで、ノウハウも経験値もたまっていく唯一の部署といえます。

このプロジェクトマネージメントをしっかりと行えば、プロジェクトの成功確率が飛躍的にアップすることは言うまでもありません。「成功請負人」として、どのプロジェクトからも引っ張りだことなります。

「業務改革」とは、IT導入に伴い、業務の効率化や負担削減、ミスの撲滅など改善に導くことです。具体的には、業務の標準化、シンプル化、イレギュラー処理の廃止、類似プロセスの統合、手作業の自動化、コア業務への人的リソース集中化などを行います。

この業務改革のスキルを伸ばすポイントは、「業務と線引きしない」ことです。業務領域も積極的に絡んでいけば、業務を覚えるし、現場との関係性も深まります。現場はITに精通している人間を重宝するし、頼りにします。
(頼られ過ぎるとメールや電話が殺到し、それはそれで対策を打たないといけませんが。。。)

現場に感謝されると、ますます貢献したい気持ちが強くなります。その結果、より大きな業務改革を支援し、より大きな感謝を受け取るという好循環が発生します。プロジェクトは辛くて苦しいことも多いですが、この感謝が全てを上回ります。IT部門は達成感を得て、次へのモチベーションに繋がっていきます。

この「プロジェクトマネージメント」と「業務改革」の2つのスキルを身に着けることで、業務部門や経営層から頼られることになります。

IT部門は、「ITと業務の橋渡しはIT部門しかできない」と自信をもって進めればいいのです。自らの特性や武器を理解し、積極的にプロジェクトに貢献していけば、重要なプロジェクトにアサインされるようになります。IT部門は、会社にとって「戦略的な存在」になっていくのです。

IT部門/情シスの目指す先

冒頭の企業、IT部長から業務部長に頼み込んで、IT部門は「PMO」として無理やり参加させてもらいました。次期エース候補のAさんに対して、田村は「プロジェクトマネージメント」と「業務改革」のノウハウをお伝えしました。

最初はまだ信頼されていなかったので、「議事録係」からスタートしました。その後、「アジェンダ作成」→「会議ファシリテーション」→「課題管理」→「進捗管理」と着実に領域を広げていきました。

プロジェクト後半になると、業務部門はAさんに頼りっぱなしです。まさにプロジェクトのキーパーソンとして、フル回転しました。

この成功実績をもとに、IT部長は今後のプロジェクトにIT部門がPMOとして必ず参加する方針を打ち出しました。

つい先日、3年ぶりにAさんにお会いしました。今は3プロジェクトを掛け持ちしていて、まさにAさんを中心にプロジェクトが回っているようです。IT部門は、Aさんに続いて活躍する人が少しづつ増えているとのこと。自信に満ち溢れるAさんを見て、田村はとても嬉しくなりました。

企業が生き残るためには、変化が必要です。その最先端にいるのが、IT部門/情シスではないでしょうか。

御社のIT部門/情シスは、生き残るためにどのような方針を打ち出していますでしょうか?